設計と監理について
設計と監理について説明しておきたいと思います。設計には基本設計と実施設計があります。基本設計は建物のデザインを決めます。つまりこれによりここに住む人の生活の設計をするわけです。基本的な外形や間取りはここで決定されます。この時点で決めるまでに依頼者のさまざまな要求や潜在的な必要性をコンサルティングによって明確化し、一つの形にまとめていきます。ここに至るまではいろいろな試行錯誤を繰り返して一つの形に収れんしていくように努力します。そして確認申請の書類を出します。確認申請は建築主がすることになっていますが実際に情勢と複雑なやりとりをするためには建築士がやる以外にありません。
実施設計は確定したデザインを施工できるように構造や収まりを決定して施行者に伝えるための図面を作成します。形が出来上がっていても作り方や内容は様々です。そのうちの最も最適と思われるものを選択し図面に表して施行者に伝えていくわけです。これにより耐震性や耐久性などを供えられるようにします。また建物の細かい収まりや詳細な部分もここで決定します。外装や内装の素材や正確な形、設備関係の収まり等ここで細かく設定していきます。工事費の調整もここで行います。
たいていあれもこれもとつめこんだ結果、工事費は当初よりかなりオーバーしているはずです。業者や仕入れを調整したり、必要なもの・不必要なものをよりわけ、必要なものは別のやりかたを考えたりして工事費を落としていきます。施主の決断がもっとも求められる場面です。
監理とは設計した建物が正確に図面通りになっているかどうかを監督する業務です。工事管理と設計監理は意味が違います。工事管理は施工者の現場監督の業務であり、設計監理は設計者側からの監督です。設計監理は建築士のみが行える業務です。 確認申請では監理建築士を置くことが求められています。
そして建築士法第28条3項には、
「建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書の通りに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」
と書いてあります。設計監理をするものと工事施工者は別々であることが望ましいのです。そうしなければ自分の工事の不良を建築主に報告する良心的施工業者でなければ手後れになってからわかるか、永遠にわからないかどっちかです。
大抵の場合悪質な業者はともかくとして、手抜き工事の発生する典型的理由は工事費のショートから発生します。工事を契約したいが為に無理な値引きをして、そのために建築費が足らなくなり、できあがると見えなくなるところから手を抜いていくというのが通常のパターンです。ですから単に安いだけという業者は注意が必要です。特にひどいところは、その現場の工事費だけではなく、過去から引き続いた赤字を自転車操業でまかなっているために手を抜くというパターンが多いのです。
監理者は犯罪の捜査官ではないので故意に隠された手抜きまで見つけることはできませんが、通常の場合、工事途中に要所要所を見ていて、工事業者と話し合っていると手抜きはできません。
逆に良心的で施工能力の高い業者の方から施行に関して、よりよい提案があることもあります。良心的な施行者と設計者が独立して協力しあうことが大切です。
最近、工事監理の契約を結んでいない建築士が確認申請の書類の工事監理者の欄に名前を書いてしまったがために欠陥住宅の責任を取らされ訴えられるケースがありました。工務店や建売りメーカーやまして施主さんにも監理ということがあまりわかっていないことが多いようです。監理も実施設計もを考えず、基本図面と確認申請だけを安く建築士にたのみ、建築士も安易に請けてしまうことがあるのです。
工事監理というのは一つの重要な業務だという認識が基本的に欠けているのが残念ながら現状なのです。