南向き日当たり良好って?


わたしたちの多くは家を建てるときの「南向き日当たり良好」神話というものを無条件に信じています。でもちょっと待って下さい。それって本当に正しいのでしょうか? なんだ〜?陽もささない真っ暗でじめじめした家がいいのかー?とおっしゃるでしょうがちょっと聞いてください。

欧米などではあまり南向きにこだわらない人たちもいます。特に環境の厳しい北欧などでは外の環境と家の中をはっきり分けて考えるからです。ヨーロッパの寒さの厳しい地方ではなるべく窓は小さく、暖かさは暖房器具でまかなうという考えが合理的です。洗濯物を外で干さない(乾燥室で乾かす)習慣のある地方ではなおさら日光には無頓着で家具や絨毯が色あせると嫌われる場合さえあります。

もう少し考えてみましょう。奥様が「明るい家に住みた〜い」とおねだりした時には、いったい何を取り入れたいのでしょう。

 建築的には光を二種類に分けて考えます。一つは直射日光で、もうひとつは天空光です。天空光とは何かと言えば、空全体の光のことです。曇りの日でも当然外は明るいですよね。太陽の光が空気に反射して空全体からふり注ぐのです。この光のことを天空光といいます。実際に私たちが家の中に取り込みたいのは天空光をさすことのほうが多いと思います。直射日光は冬の一時期は歓迎されますが、それ以外の時、特に夏にはなるべく避けたいものになります。

事務所用途の部屋では北向きの方が直射日光を避けられ一日中安定した光を得られます。日差しが入りこむオフィスは仕事にはむきません。

吉田兼行は徒然草の中で「家の造りようは夏を旨とすべし」と言いました。冷房を知らなかった当時としては冬の寒さよりも夏の暑さの方が大きな問題だったようです。そのためには日差しがさし込まない風通しのよい家の方が好まれたのです。

そうしてみると私たちが欲しい家とは天空光がいっぱい入り、風の通りが良く、冬にできれば日差しが入り、冷暖房がよく効く家ということになります。

ところで、夏の時期に一番日差しが当たらない面は東西南北のうちどの面だと思いますか?一番日差しが当たらないのは北側です、次に日差しが当たらない面はなんと南側なのです。結構意外ですよね。これは太陽の高さに関係があります。夏の太陽は高度が高いために地面に垂直に近く、日差しが降りそそぐので、壁に当たる日差しの量は南側ではかえって少なくなります。軒やひさしがあると、さらにさえぎられるので窓の中には陽が入りにくくなります。ところが東側や西側では地平線から出た太陽や、沈む太陽がまともに直撃するので日差しの当たる量は非常に多くなります。逆に冬は太陽の高度が低くなるので、南側でも日差しが家の中に入り込むようになります。
夏に限っていえば日差しを避けるために南側に窓を作るのです。

天空光を効率よく取り入れるには、天窓やハイサイドライトが有効です。特に天窓は建築基準法上でも通常の窓の三倍の効率を認められています。
ハイサイドライトとは部屋の高い位置に作る窓のことで最近ではアーチ型に作ったり、家の妻側の屋根のすぐ下に三角形に作ったりとおしゃれな造りのものが増えてきました。しかしここで気を付けなくてはならないことは、なるべくこれらを南側に作らないことです。天窓やハイサイドライトから直射日光が差し込むと家の中は温室になってしまいます。どうしても必要なときには、ルーバーをつけるとか熱線反射ガラスを使うとか工夫が必要です。

周辺を建物に囲まれた都市型住宅では、これらを活用することにより明るい家を造ることができます。南側にこだわって窓を作っても窓の外がすぐ隣家では何の意味もありませんよね。 そして冷暖房を効率的に活用するために高気密高断熱の造りにすることをおすすめします。気密性は通常のサッシでも充分です。ただ断熱は重要でもっとも熱が逃げていく所は窓ガラスです。結露もそれが原因です。
カーテンを吊るすとある程度、寒さは防げますが結露はもっとひどくなります。(窓廻りの温度がさらに低くなるからです)

ただし日本は四季おりおりの気候が豊かな国です。家を締め切るのは冬や夏の最も厳しい時期で、春秋は窓を開け放つことも多いと思います。そのために窓を開けた場合の通風をよくよく考えられた方がいいかと思います。時には風の通り道を重視するために、完全な南側よりもちょっと傾けて窓を作ったりということもあるかもしれません。

ポイントとなるキーワードは天空光、通風、冷暖房の効率です。そしてできれば冬の日差しが入れば上出来といったところでしょうか。